午後1時。義母から預かっているたっくん(ミニチュアダックスフンド15歳)と、うつらうつら昼寝をしていると、突然の来訪者。
近所に住む一人暮らしのTさんだった。
うちにアポ無しで来訪者が来ることなんて普段はないため、わたしは寝ぼけた顔を両手でこすりつつ、緊張とともに扉を開けた。
用件は、うちの石垣の下に生えている蕗のとうを採っていいかというお伺いだった。
厳密いえば、そのの土地はうちが管理をしているが、うちの名義ではない。
うちの許可はいらないので、好きなときに好きなだけ採ってくださいと答えた。
とても律儀な方だなぁと思った。
そして、帰りにうちのお庭を見て、ひどく感動されていた。
「工事をしていたのは知っていたけど、こんな素敵なお庭ができたなんて!」と、植栽一つ一つを言い当てては、都度都度感激していた。
うちは少し高台に建っているため、なんとなく家と庭があるのは分かるけど、その全貌は足を運んだ人にしか見られないことが判明した。
そして、Tさんはお花が好きな方のようだった。
今は旦那さんが亡くなり、「手のかからないクリスマスローズぐらいしかお世話ができないのよ」とおっしゃっていた。
はじけそうなバラの蕾を見て、じきに咲くバラの景色を私以上に楽しみにしているようだった。
「薔薇の咲くころ、また見にいらしてください。私の許可もいらないし、いつでも。ぜひ。」
そう言うと彼女は大変喜んでくださった。
私はオープンガーデンというものが苦手意識がある。
「こんなに素敵な庭を作ってもらったなら、みんなに見せたくなるでしょ」と、人にはよく言われる。
だが、自分の気まぐれな病気のせいで、日々日々人をお出迎えできるような体力、精神力があったりなかったりして及び腰だ。
それに、自分の範囲で管理しているものを「どうでしょう!」って誰かに見せることに抵抗がある。
でも、今日Tさんがいらっしゃって、オープンガーデンとまでは言わずとも、顔を知っている方に見にきてもらうのも悪くないなって思った。
そうだ。そうだ。思い出した。
本来、私はこういう人間だった。
思い出させてくれたTさん。ありがとうございます。
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