人生のイレギュラーシナリオのどこのページにも載っていないことが起きた話

(10年前のエッセイです)

あのーまず、昨日の出来事を2行で書くと、結果事件性がなかったんだけど、事件だったら大変なことがマンション内で起こって、警察と防犯カメラに映る血まみれの男性をチェックするという、人生のイレギュラーシナリオのどこのページにも載っていないことが起きました。

事件が起こったのは夕方4時頃。

住人の奥さんが下に降りようとエレベーターに乗り込もうとしたら、血まみれの男性が乗っていて慌てて逃げて110番したそうです。(男性はそのまま1階で降りて行方不明)

パトカーがサイレンを鳴らしてうちの前に4台止まったので何事!?と思い、窓を開けて下を見ると、うちのマンションの周りの道がすでに「keep out」状態になっていて、

警察の方が20人ぐらいマンションの前にいました。

警察が管理人室の鍵を開けてくれと頼みにうちの部屋に来たんですが(うち、今年副理事なもんで管理人室の鍵を預かっておりまして…)

朝から明日から始まる研修資料の印刷やら資料作りやらでバタバタしていて、すっぴん&ジーパンの股のあたりにお昼にこぼしたかぴかぴになった米が10粒ぐらいついている状態だったんですが、早く!急いで!ムーーーヴ!という感じで警察の方がピリピリされていたので、上着もはおらずパニック状態で管理人室の鍵を握り締めて飛び出したのです。

でも、出しなになぜか「はっ!これだけはしておかないと!」ととっさに半年使ってない香水を頭に吹きつけました。脳天に2プッシュ。

なぜかはよく分かりませんが、パニックになると香水をサクセスのように脳天に吹き付ける習性があるようです。

えー、で、なんの話でしたっけ。そうそう。管理人室の鍵。

管理人室の鍵を持っていくと、刑事さんにまず身元確認をされまして、

私「504号室の大矢です。」

刑事「あ!大家さんですか!?」

私「いえ、大家ではなくて、苗字が大矢です。弓矢の矢のほうの。」

刑事「あー、はいはい。」(←なんだよ紛らわしいよという反応)

そしてすぐさま、小ぜまい管理人室で刑事×10名、鑑識の人×2名、セコムの人×1名、香水くさい私。という状況でモニターをチェックしたんですが、なるほど奥さんの目撃した時間に血まみれの男性が映っていまして。帽子と首下からひざにかけてびっしりと血が。

もう、その時点でヒザがガクガクの状態だったのに、刑事の一言。

馬乗りの返り血だな。」

血の引く音ってあるんだなぁと実感しました。サーーーッと頭の血液が足に向かって下りる音です。

それからすべての住人への聞き込みがはじまり、防犯カメラの静止画を携帯カメラで撮って本部へ送り、すごいスピード感で捜査が行われます。

薄着で香水臭い私はと言うと、管理人室から出ないでくださいと言われたので、ひたすら管理人室の窓口に座っておりまして。

で、そこに座っていると何度も何度も警察の方が入れ替わり立ち代り、私の身元を確認してきます。

そして何度も何度も「504号の大矢です」「あ!大家さんですか?!」「いえ、その大家ではなくて、苗字が大矢です。弓矢の矢の」「あー」というくだりを繰り返し、

最後のほうには親切心で「504の弓矢の大矢です。」という訳の分からない自己紹介を口にし、警察にいらない疑いをかけられました。

2時間ほどの捜査で真相が明らかになりました。

その男性は最上階の住人の方で、家の中でこけてドアノブに頭をぶつけられて、大量に出血してパニックになり、自力(徒歩)で最寄の病院へ向かったことが分かりました。

命に別状はなかったとのことで安心です。

ただ、自分は防犯カメラに映った男性を見ても住人って分からなかったのでちょっと申し訳なかったです。

6時半頃に、事件性はないので部屋に戻っていただいて結構ですと刑事の方に言われ、予定していた花見をする気分にもならずひざを震わしたまま近くの酒場で飲みました。

「大家ではなく大矢という苗字」をいかに説明したらすぐに分かってもらえるかという不毛なお題を肴に…。

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