(7年前のエッセイです)
1ヶ月まえぐらいでしたか。
お風呂でふときづいたのですが、出べそになってたんですよ。出べそじゃなかったのに。
「え!?出べそって後天的になるもんなの!?へぇー。生きとるんやな。へそも。」
ぐらいに思っていたのですが、数週間ほど経ったころに、おへそあたりが痛いんです。
チクチクとする腹痛で。
ちょっと胃潰瘍に似た痛みだったので、経験上ほっとけば治ると踏んで、その日は寝たんです。
大正漢方胃腸薬飲んで。
で、次の日、ちょっと痛みが右のほうにずれてまして。
痛みの毛色もチクチクからシクシクに変わってまして。
郵便局に出かけたとき、わたりかけた青信号が点滅してダッシュしたら、ズキン!と激痛がお腹に響いて中央分離帯で膝から崩れました。
もー、これは、大正漢方胃腸薬のレベルじゃない!と思い、家に帰って靴も脱がないまま玄関で
「お腹 痛い 右にずれる」
とグーグル先生に聞いたんです。
するとこの痛みは教科書どおりの「虫垂炎」だそうで(俗で言う盲腸)
知恵袋先生によると、早めに行けば薬で散らせると書いてあったので、
「行きつけの町医者に行って、パリッと薬で散らしてもらうか!ウッシ!」
というノリでその足で町医者へ行きました。
お腹に響くんで忍び足で。
で、病院の受付で検温したら、38.9。
結構混んでいたにも関わらず、診察室にすぐに通され、症状を話すと
「あー、ここ痛い?押したときと離したとき、どっち痛い?」
「どっちも痛いでス。強いて言うなら離したとき痛いかもしれないでス。イテテテテ。。」
「あー、じゃぁ、ほぼほぼ虫垂炎だと思うけど、昔みたいに投薬しながら経過見てるよりもパッとCT撮ってはっきりさせたほうが早いからそうしましょうか。
虫垂炎は長引くと大変なことになるし。国立病院に紹介状書くのですぐ行ってください。今から時間ある?」
「ありまス。」
「じゃぁ、すぐ行ってね!」
「はいっ。イテテテテ。。」
うずくお腹を抱え、タクシーに乗り込み、国立病院に行くと、すでに外来が終わっている時間で(15:30)。
総合案内に紹介状を渡すと、
「ここをまっすぐ行って左に銀色の扉があるのでこのファイルを持ってそこに行ってください。一人で歩けますか?」
「あ、大丈夫でス!一人で行けまス!イテテテ。。」
銀色の扉(あのー、スーパーのバックヤードにある扉みたいな、取っ手のないやつ)には赤い文字で「救急」の2文字が。
(え!?え!?救急?ER?)
恐る恐る扉を開けると、患者が乗ったストレッチャーが何台も並んでいまして。
せわしなく若い医者たちが治療しています。
一番近くにいたブラックジャックによろしくの斉藤英二郎みたいな医者にファイルを渡すとすぐさまストレッチャーに寝かされ、名前が書かれたバンドを腕につけられます。
で、3人ぐらい症状を聞きにきたり、点滴を打ったり採血をしてくれたりして。
カーテン1枚右隣では
「田中さん。レントゲン見たんですけど、折れてるの左だけかと思いましたが右も折れちゃってますね。」
左隣では
「ただの胃潰瘍かと言ってたんですがどんどん背中まで痛くなってきて、ぐったりしちゃってて。。助けてやってください。。。」(旦那さんの声)
(き、緊張感ハンパない!!!)
私みたいなもんがいていいのかと変な汗を脇にじっとりかいていると、英二郎がシャッとカーテンを開け、
「大矢さん。熱計らせてもらいますね」
で、
36.6
(下がるなや!!せめて!!)
そして、5分後に英二郎がまたやってきて、
「CT撮って虫垂炎かどうか調べますね。」
英二郎にストレッチャーで運ばれそうになりましたが、自分で歩けますと断り、CT室へ移動します。
CTの係りの男性に金属製のものを身に着けていないかどうか聞かれたのち(ない)、あの例の丸い筒に入れられCTを撮ります。
撮るやいなやCTのお兄さん。
「大矢さん、チャック、金属ですね」
チャック、金属でした。
膝までズボンを下げてくださいと言われて、英二郎(とCTのお兄さん)の前でズボン下ろすなんて!と思いましたが、
ババアの恥じらいおごり高ぶり!と言い聞かせ二人に見守れながらモジモジ下ろして撮りました。
そういえば15年ぐらい前に、親戚のおばさんが、
「下着だけはいいのを毎日つけなさいよ。いつ救急車で運ばれてもいいようにね。私はそれで大恥かいたから」
と言っていて、なんでそんなあるかないか分からんようなときのために!っていうかそんな状況で恥じらう余裕なんてあるんかいな。と思っていましたが、ありました。
あのー、違うんですよ。
パンツって、捨てようと思って洗ったら、せっかく洗ったんだからってまた履いちゃって。
使ったのをそのまま捨てるのもいやだから、洗って。
その繰り返しなんですよね。パンツって。
えーっと、何の話しでしたっけ。
そうそう。CT。
どうやら撮ったCTが鮮明に写っていなかったらしく、造影剤を打って撮りなおしたいと英二郎。
「これから打つ造影剤は40万人に1人の確立で死ぬかもしれない薬です。同意いただける場合で結構なのでコチラ(同意書)にサインをお願いします」
今まで薬のアレルギーなどなかったし、英二郎を信じてサインをしました。
「準備ができたらまたきますね」
(心の声)
40万人に1人かぁ…。大丈夫だよね。
そういえば昨日テレビで宝くじ1等が当たる確立が2000万分の1って言ってたな。。。
えー。。。
そう考えると宝くじってほぼ勝率なしやん。
そりゃ、私がバラ30枚買ったって当たるわけないよなー。
あ。でも、勤め人やったころ、隣の席の小林が1等当たってたなぁ。
それで家買ってたなぁ。
庭でバーべキューとかして。
奥さんすごい朗らかな人で。
今なにしとるんかなぁ。
元気かなぁ。小林。。。
小林はいいけど、何の話やったっけ。
えーっと、あ、そうそう。造影剤。
英二郎「では、行きましょうか」(シャッ!)
今度は4人医者がいて、造影剤を打って異変があったら対処できるようスタンバイしてくれていました。
そして4人に見守れながらズボンを膝まで下ろします。
「では、造影剤を打ちます。何かあったらすぐに知らせてください。それではいきます」
カーっと熱くなるような感覚が全身を駆け巡り、あっという間にCTは終わりました。
ERに戻ると、血液検査の結果が1時間ぐらいで分かるのでストレッチャーで寝ててくださいとのこと。
で、あのー、終わったことですが、書くのもはばかるんですが、
じつはね、もう、あんまりお腹痛くなくなってる。(ここ小声で)
もーね、ほんと、英二郎に申し訳なくて、言い出しづらかったんですが、もう、正直言うと、検温のくだりらへんでちょっと痛みが治まっちゃってて。
平熱でお腹も痛くない人、それはもはや、ただの健康なババア。
そんな健康なババアはERのストレッチャーの上で時が過ぎるのを体育座りでただ待つという、税金泥棒みたいなバツの悪い時を過ごしました。
1時間後。
「血液反応は虫垂炎っぽい数値が出てるけど、CTにはそれらしいものが写っていないのでとりあえず帰って様子見」
ということになりました。
点滴を外し、名前が書かれたリストバンドをハサミで切りながら英二郎が言いました。
「大矢さん、お医者さんになんていわれてこちらに来たんですか?」
ですよね。ですよね。ごめん。
英二郎に何度も頭を下げて、13,000円の支払いを済ませ、携帯を見ると、
「入院するかもしれん。今国立病院のERにいます」のメールを見た旦那のテンパった返信が何件も。
そして彼がどうやら病院の前で待っていてくれてるらしく、いろんな罪悪感が襲ってきて、お腹がちょっと痛み出しました。
いままで健康は自分のため、身内のためだと思っていましたが、今後は医療最前線で働く英二郎たちに迷惑をかけないために健康でいようと固く誓った2017年の幕開け。
あ。今年もよろしくお願いいたします。
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